「アヌシー国際アニメーション映画祭」ディレクターインタビュー実施報告(「第30回東京国際映画祭」の提携企画で招聘)

J-LOP4補助金事務局では、「第30回東京国際映画祭」(2017年10月30日、会場:六本木アカデミーヒルズ49オーディトリアム)の提携企画として、「アヌシー国際アニメーション映画祭」からマルセル・ジャン氏(CITIA* アーティスティックディレクター)、併設見本市「MIFA」からミカエル・マラン氏(CITIA* マネージングディレクター 経済発展・MIFA会長)、そして日本代表の山口 晶氏を招きセミナーを開催いたしました。その3名に、セミナーではご紹介しきれなかった日本アニメーションへの期待、映画祭のゲストカントリーのメリットなどをVIPO専務理事 事務局長の市井と事務局次長の槙田がインタビューしました。

セミナー当日の配布資料はこちら

  • マルセル・ジャン氏(CITTA* アーティスティックディレクター)[略歴
  • ミカエル・マラン氏(CITTA* マネージングディレクター 経済発展・「MIFA」会長)[略歴
  • 山口 晶氏(CITTA* 日本代表 サンブリッジ取締役代表)[略歴

*CITIA:アヌシー都市圏共同体、オート・サヴォア地方議会 およびローヌ・アルプ地域圏が出資する文化協力事業公社

(以下、敬称略)

 

アヌシーディレクターが語る、アニメーション市場戦略の裏側
── 「日本アニメ」のポテンシャルは?

 

世界が注目するアニメーション専門映画祭と見本市での日本アニメのポジショニングと今後の可能性

世界に影響を与え続ける日本アニメ

アヌシー国際アニメーション映画祭と「MIFA」の概略

▼「アヌシー国際アニメーション映画祭」とは
毎年6月にフランスの都市アヌシーで開催する、世界最大規模のアニメーション映画祭。ASIFA(International Animated Film Association / 国際アニメーション映画協会)公認。登録パスは1980年代が約450、1990年代には約5,000、2017年は10,000を突破。
1965年 「カンヌ国際映画祭」からアニメーション部門を独立させる形で創設
1965年~1975年 短編映画のみを対象にした隔年開催
1985年 アニメーション国際見本市「MIFA」を併設。
同年   テレビシリーズのアニメーション部門、CM用の映像部門を開設
1997年 隔年開催から毎年開催へ
2000年 初代ゲストカントリーとして日本が選ばれる
2017年 登録パス1万人を突破
 
▼「MIFA」とは
世界最大のアニメーション国際見本市。「アヌシー国際アニメーション映画祭」に併設して開催。アニメーションメーションビジネスの関係者が参加し、作品の共同開発や資金調達、配給権の売買、ネットワーキングや情報交換などが行われる。
1983年 1980年代に起きたフランスでの政権交代時に文化大臣になったジャック・ラングが映画祭に参加
1985年 「MIFA」設立
2007年 3日間から4日間に延長して開催
 
▼2017年度の実績
「アヌシー国際アニメーションション映画祭」
・開催期間:2017年6月12~17日(6日間)
・来場者数:11万5,000人
・登録パス:10,000
・参加国: 95か国
・応募数: 2,885作品
・選考数: 250作品(短編87本、長編32本、テレビ用31本、バーチャルリアリティ11本、CMやビデオクリップなどの依頼制作40本、卒業制作作品49本)
・ゲストカントリー:中国
「MIFA」
・開催期間:2017年6月13~16日(4日間)・登録パス:3,000
・出展社数:660
・海外市場の開拓:74か国

 

映画祭の歴史、変化・改革について

市井 これまでの映画祭の歴史と、近年の変化や改革をお聞かせください。
 
マルセル 「アヌシー国際アニメーション映画祭」(以下、アヌシー)は1965年に“短編映画”のコンペティション(以下、コンペ)という形で出発しました。その後、アニメーション産業の発展に伴い、80年代の半ばにはテレビシリーズのアニメーションやCM、ビデオクリップなども出品されるようになりました。
 
西洋においては1990年代末くらいまで長編アニメーションのプロデューサーがほとんどいなかったので、これまでに大きな成長を遂げた部門があるとすれば、それはまさしく“長編アニメーション映画”の部門です。15年前くらいまでは、アヌシーのコンペでも長編アニメーションの出品は3~4本でした。現在は毎年10本ぐらいの出品があります。
 
私たちは常に新しいトレンドを探しています。21世紀の初頭はインターネット用の映像コンペ部門がありましたが、インターネットは現在、テレビの代わりとなる放映プラットホームとなっているので、インターネット配信のみの作品も、短編部門や広告部門といった既存のカテゴリーに出品されるようになっています。
 
ここ何年かの新しい傾向は、“短編映画”のサブカテゴリーとして、いろいろな下位部門が新設されていることです。例えば、オフリミッツアニメーション映画というセクションは主に実験的な映像を扱う部門で、昔からのアニメーション技術に限らず、実写にモーションキャプチャーを取り込んだものもあります。2017年には子どもや青少年用の短編映像部門を作りました。
 
それから、アニメーション産業がまだ発展していない国の作品を取り扱うパースペクティブという部門を作っています。パースペクティブには展望という意味があり、そうした国を奨励するため作られました。
 
市井 具体的にはどちらの国ですか?
 
マルセル 南米とアフリカです。現在はまだ参加者数は少ないですが、多くの才能が生まれていて、今後のアニメーション産業の未来を担うだろうと思っています。
 
2016年にはVR(バーチャルリアリティ)の部門も作りました。公式選出作品を出す部門ですが、コンペの形はとっていません。今後、コンペ形式になる可能性はありますが、現在はどのようにしていくか検討中です。
 
美術館のアニメーションを使ったインスタレーション作品も対象としています。ビジュアルアートの仕事をしている方たちが、アニメーションのクリエイターでもあるので、そうした作品にも、映画祭での居場所を与えたいと考えているからです。昨年は中国のアニメーションに敬意を捧げたのですが、中国のアニメーターは映画よりもビジュアルアートのほうが自由に表現できるのです。

 

日本アニメーションに対する評価、反応、期待


市井 コンペ部門で受賞すると、プロモーションとしてどれだけプラスになるかと考える方が多いと思うのですが、その点はいかがでしょうか?
 
マルセル 日本の受賞作品の大半、例えば、『百日紅~Miss HOKUSAI~』(原恵一監督、2015年長編部門審査員賞)、『ジョバンニの島』(西久保利彦監督、2014年長編部門審査員特別賞)、『この世界の片隅に』(片渕須直監督、2017年長編部門審査員賞)、『夜明け告げるルーのうた』(湯浅政明監督、2017年長編部門クリスタル賞[グランプリ])は多くの国、とりわけフランスなどで配給されています。ですから効果はあるといえます。ロサンゼルスでの「Animation is Film」では、『夜明け告げるルーのうた』や『MUTAFUKAZ』(2017年Screening Eventsで上映)などが上映されましたが、それによってキャリアも広がりますし、作品のセールスにも貢献していると思います。
 
また過去10年間、4本の日本の短編映画が賞を受けています。例えば加藤久仁生監督の『つみきのいえ』ですが、彼はアヌシーでスタートしたようなものです。2008年に短編部門クリスタル賞(グランプリ)を得て、2009年にはアカデミー賞の短編アニメ賞を受賞しています。ですからアヌシーは、ある意味での“登竜門”であり、作家の方にとってはアヌシーを踏み台にして、例えばオスカーなどに上がっていけると思います。
 
市井 日本のアニメーションに対する評価や反応、期待についてお聞かせください。
 
マルセル 非常に幅広い質問ですね。アニメーションの世界で日本は、北米、フランス、3つの柱のひとつかもしれません。日本のアニメーションはアジアや西洋に対して、大きな影響を与え続けています。ファミリーや子供向けではない“大人向け”の作品が人気を得たのは、日本が最初だと思います。
 
中国や韓国の作品の中には、日本の作品にインスパイヤーされていると思えるものが多々あります。30年前の西洋では、日本のアニメーションといえば手塚治虫さんの作品ぐらいしか知られていませんでしたが、80年代の末は大友克洋さんの『AKIRA』、現在では宮崎駿監督や高畑勲監督、細田守監督、今敏監督などの長編映画が知られるようになりました。こういった日本の作品が海外の文化に溶け込んで大きな影響をもたらしているのを目の当たりにしています。
 
例えば、クエンティン・タランティーノ監督が『キル・ビル』でアニメーションションを取り込んでいるのを見ると、50代以下のアーティストたちは、日本のアニメーションにかなり親しんで育ってきたことがわかります。日本のアニメーションは、“大人向け”のアニメーションが一般的になることに大きな貢献をしてきただけでなく、西洋の“大人向け”のアニメーションにも大きな影響を与えていて、西洋のアニメーションに対する見方を大きく変える役割を果たしたと思います。

 

アヌシー「映画祭」と「MIFA」に参加する意味

市井 日本のアニメーション関係者にアヌシーをすすめる、アピールポイントがあれば教えてください。
 
マルセル アヌシーには世界中から“日本アニメ”の愛好家が集まっており、その観客の方々と出会うことができます。日本のプロデューサーの方々がご自身の作品、そのニュースを広めるのにとても良い場所だと思います。
 
高畑勲監督の『かぐや姫』はカンヌ映画祭で紹介されて、その後アヌシーにきています。アヌシーにはカンヌよりも、この作品の質の高さを評価することができる観客がいます。これは“日本アニメ”に限られたことだけではなく、世界各国に対しても同じような理解度があります。ディズニーやピクサー、ユニバーサル・スタジオ、ドリームワークスなど、大手のスタジオがアヌシーまでわざわざ来るのは、作品の質の高さを認知してもらえる、非常に知識のある観客がいるからです。
 
市井 わかりました。それでは「MIFA」についてお聞きします。他のイベントとの違いや特徴はどのようなものでしょうか?
 
ミカエル 「MIFA」には長編も短編もあります。他のイベントのように、例えばテレビに特化するのではなく、あらゆるフォーマットが対象です。若者向け、家族向け、青少年向けなどあらゆるターゲットのあらゆる作品をここで見つけることができるのです。これが他の見本市やイベントと大きく違う点で、「MIFA」の大きな強みとなっていると思います。
 
また、来場者の方々はとてもバラエティに富んでいます。クリエイター、プロダクション、ポストプロダクション、製作を依頼する会社、配給・放映関係者、それからアニメーション学校の学生、文化庁のような政府関係や東京都のような自治体など、直接、間接的に製作・配給などに関わっている方々がいろいろな目的で来るのです。プロジェクトを立ち上げるためのパートナー探しやプロジェクトのアイディアを得るため、共同制作、資金調達や投資家探し、バイヤーに直接販売するため、ネットワーキング、それにリクルート、本当にさまざまです。
 
リクルートは「MIFA」の中でも非常に重要性が増しています。公式サイトには、応募者が履歴書をアップロードできるようになっていて、登録者はそれを見て新しい才能を探すことができるのです。学生は将来の産業を担うわけですから、その存在の重要さが認められるようになってきています。

 

豊富な部門とイベントで幅広いジャンルをカバー

公式コンペが適した道とは限らない

市井 日本人特有の積極的ではない性格や言葉の問題で、「MIFA」という出会いの場を有効に活用できるのかという疑問があります。どのように思われますか?
 
ミカエル 言葉などの壁があっても、外部に対して積極的に働きかけようという気持ちがあれば、成果を得られるいちばんのマーケットはアヌシーだと思います。何よりも、アヌシーの観客、業界人やプロフェッショナルには、アニメーションと言う“共通言語”があり、そして非常に開かれた精神を持っています。
 
マルセルもいくつかの例をあげましたが、アメリカのスタジオの方たちはアヌシーで、新しい才能や良い作品をチェックしに来ます。アヌシーでは多くの出会い、いろいろな人や作品に会うことができます。これは家族が集うときと同じような感覚で、ひとつの共同体が出会うランデブーの場であるからです。日本は世界のアニメーション業界においての家族であり、重要な一員なので、しっかりとした居場所があると思います。ましてや、日本のクリエーションと産業は力もあります。
 
マルセル アニメーション作家の山村浩二さんの例をあげたいと思います。山村さんは何度もアヌシーに来ており、2003年には『頭山』という作品でクリスタル賞を受賞しています。『頭山』はその後、アカデミー賞の短編アニメーション部門にノミネートされました。その後に制作した短編アニメーション『マイブリッジの糸』はNFB(カナダ国立映画制作庁)との共同制作です。山村さんは日本語しか話せませんが、『マイブリッジの糸』を制作する障害にはならなかったというわけです。言語の障害があったとしても、控えめな性格であったとしても、ビジネスに繋げることは可能なのです。
 
槙田 山村さんの例えは日本から見たアヌシーと、アヌシーが我々に思うこととのギャップを表していると思います。山村さんは日本のアニメーション業界において、知る人ぞ知るクリエイターですが、商業的な長編ではなく、あくまでもアニメーションを中心とした世界でアーティスティックな作品を制作しています。ですから、山村さんの話をすればするほど、日本の一般的なアニメーション業界や制作会社にとってアヌシーは、アーティスティックの最高峰であり、「ビジネスをうまく展開する場ではない」と捉えてしまうと思います。
 
マルセル アヌシーはさまざまな部門を作り、広範囲なジャンルをカバーしています。実はそういったことをもっと強く売り出したいんです。山村浩二さんのようなアーティスティックな作品から、ピクサーの『モンスターズ・ユニバーシティ』まで、その両極端の間に全ての作品が含まれています。今後、もっと広報活動が必要だと思いますが、日本のパートナーの方にお伝えしたいことは、ある作品にとっては必ずしも公式コンペが適した道ではないということです。コマーシャル向きの作品に関しては、イベントセッションや未公開作品を上映するアワープレミアという枠組みで紹介する方がいいかもしれません。そうすれば、審査員の目から離れたところで上映できます。

 

作品にあったポジショニングで参加する


マルセル コンペの審査員会では、まだ知られていないすばらしい“秘宝”のような作品を探そうとします。多くの人たちに気に入られ、魅力があり、賞的な要素がある作品でも、審査員にはあまり気に入られないかもしれません。ですからアヌシーにはいろいろなカテゴリー、いろいろなウィンドウがあるのです。つまり、どのような作品にも、いちばん良いコミュニケーションチャンネルがあるわけです。また世界中から500人ものジャーナリストが来ますから、そのジャーナリストの方々が、皆様の作品のプロモーションに力を貸してくれます。
 
アメリカの方々とは「この映画はイベントセッション向きだ」「この映画はコンペ向きだ」と振り分けをしています。日本のパートナーの方々ともそういったことの話し合いが始まりつつあると思っています。
 
私がアーティスティックディレクターに就任した2012年のことですが、日本のパートナーの方に「この映画はコンペ部門ではなくて、イベントセッション向きだと思います」と伝えたことがありました。当時はそのようなことを言うと、その作品に対して否定的な判断をしたと受け取られがちでした。しかし、そんなつもりはまったくなく、どうすればその作品が成功するのかを考えて、ポジショニングを提案したのです。
 
ミカエル 私たちは毎年、ロサンゼルスの大手スタジオをすべて訪問します。経営者や監督は「今度、アヌシーでこれを紹介したい」と、何年後かに封切りするような未発表作品の企画について話してくれ、ときには映像を見せてくれます。スタジオ内部の人ですら知らない企画を教えてくれるのです。
 
ですからマルセルは、「この作品や企画なら、こういうポジショニングにするよ」「コンペ向けだろうな」「これはアワールドプレミアとして特別プレミアムセッションで上映するよ」「この作品はアーティスティックでおもしろいから、Work In Progressで取り上げよう」などと言うわけです。日本のスタジオのみなさんとは、今後、そうしたことを議論する信頼関係を確立していく必要があると思っています。
 
槙田 作品のポジショニングが大事なんですね。
 
ミカエル そうです。それに、公式コンペの選考作品ばかりが注目されますが、それ以外の作品の中には、「MIFA」というマーケットで充分に興味を引く作品があります。例えば、長編やテレビシリーズにはコンペで選考されづらい作品もありますが、「MIFA」にはそういうアニメーションを探している方たちもいるのです。
 
日本の方は映画祭のことしか考えないので、「MIFA」に作品を提出することを思いつきません。「カンヌ国際映画祭」のコンペには20ほどの長編映画が出品されますが、作家主義の映画ではない、まだプロジェクト段階の作品が何千も出されていて、買い手がつくことがあるのです。アヌシーでも同じです。アヌシーで日本のスタジオが知名度を獲得する可能性もありますし、芸術的な作品でなくても、マーケットで買い手が見つかる可能性があるのです。

 

アヌシー日本代表の役割

市井 アヌシーには、いろいろな可能性があるということがよくわかりました。それをどのように日本の人たちに知ってもらうかが重要だと思います。次のステップとしては具体的に何が必要でしょうか?

山口 私は日本代表として、アヌシーでどのようなことができるかをご案内しています。例えば、ある作品を製作委員会の形でテレビ局が配給をするとしたら、私は角度を変えて各社にご案内します。例えば、配給会社の方には「アヌシーに出品することでアカデミー賞につながるかもしれません」、製作会社の方には「スタジオを知られること、スタジオの知名度を上げることが重要です」と。

市井 アヌシーの利用価値を示すのですね。

山口 そうです。「海外でどのように展開していけるのか?」「共同制作につながるのか?」と疑問を抱く方もいらっしゃるので、その場合は「アヌシーはその回答を得られる場所です」とお答えしています。

とはいえ、ヨーロッパやカナダは国策としてアニメーション産業の支施策がありますが、日本のアニメーション産業はプライベートファンドが仕切り、海外に展開するというマーケットです。今後、共同制作をするにしても、文化や産業の違い、また資金の調達方法はビジネスモデルが違うと思います。ですからそれらを理解した上で、日本代表としてどのようにサポートをしていけるのかを、日本のアニメーションに関わるいろいろな会社と話し合える場が必要だと感じています。

市井 日本の場合、大企業になればなるほどセクション別になっていますから、適切な部門のキーパーソンが誰であるかを見極めて、その部門、その方と話し合うことが重要ですね。

 

アヌシーをいかに活用するか

ゲストカントリーとは?

市井 日本は2000年、初代のゲストカントリーに迎えていただきましたが、ゲストカントリーになった場合メリットはどのようなものでしょうか?
 
マルセル まず“ビジビリティ”という点で大変メリットがあると思います。もし、日本を再びゲストカントリーとしてお迎えするならば、アニメーション産業に関する長い歴史を前面に打ち出すことができるでしょう。過去20~25年の間、日本のアニメーション界の最前線にいたのは宮崎監督と高畑監督だと思います。しかし現在、こうした巨匠のキャリアは最終段階に入っていると思います。ですから、大事なのは次の世代をもっと前面に打ち出すことだと思うのです。
 
山口 宮崎監督のような、海外への発信力があるのは誰なのかと皆が関心を持っていますし、今年100周年を迎えた“日本アニメ”の今後の動向も含めてハイライトする機会になるかもしれません。ゲストカントリーになるまでに、国内でもビジョンを確立してそれを発信するような流れに持っていく必要があると思います。
 
市井 ゲストカントリーになった場合の、オブリゲーション(義務)や欠かせないものはありますか?
 
ミカエル アヌシーからゲストカントリーになるための権利金を要求することはありません。ゲストカントリーになった場合、映画祭では当事国の作品をプログラムに入れ、講演会でもスピーカーとして登壇していただきます。「MIFA」でもその国の企業をたくさん迎えるでしょうし、展示会でもゲストカントリーを全面的に打ち出します。
 
ですから、ゲストカントリーになれば、プログラムにリストアップされたアーティストたちが参加するための、例えば国としての支援が必要かもしれません。そして「MIFA」でも、ブースは人目につくような大きさと見せ方が必要になるでしょう。また義務ではありませんが、ゲストカントリーは「MIFA」初日の夜に、レセプションを行うことが多いです。あと、映画産業に限らず、フランスに進出している自国の企業や在仏大使館などにも何らかの形で支援してもらうこともあり得ます。
 
ただし、それはあくまでもゲストカントリーの方がいろいろ関係者を結集させようとする意思があればの話です。我々が確信を持って言えることは、ここまで発展したアヌシー映画祭で、もし日本がゲストカントリーになったら、大変な反響があるということです。
 
山口 数年前、「MIPCOM」(カンヌで開催する国際映像見本市)で日本がカントリーオーナーになったときに、4K・8K技術が注目されたように、日本のアニメーション産業が発信するメッセージは非常に注目されるでしょう。海外に発信できる場としてアヌシーは最適だと思います。
 
市井 わかりました。いろいろな情報をありがとうございます。

 

ゲストカントリーの波及効果

市井 一般企業からみて重要なのは、ゲストカントリーになった後、何が起こるかということです。スペインはゲストカントリーで注目された後、スペインのアニメーション業界にどのようなポジティブな反応、結果が出てきたのでしょうか?

マルセル 正確な数字では難しいですが、パラマウント映画やワーナー・ブラザース、その他のメジャーなスタジオでも、今やスペインの会社と仕事をするようになっています。5年前にはそういうことはありませんでした。

ミカエル 当時、スペイン経済は悪化しており、そこから抜け出す方法を模索していました。ゲストカントリーにお迎えすると提案したとき「それは大変な祝福だ。スペイン・イズ・バック」「スペインが復帰しているメッセージを送るすばらしい機会だ」と考えたのです。そして、スペイン企業や才能ある方たち、新人を映画祭で打ち出すようにしました。その結果、ロサンゼルスのスタジオでもスペインの方たちと仕事をするようになったのです。

もし日本を再びゲストカントリーとしてお迎えすることになれば、有名な巨匠と才能ある新人や若い企業との橋渡しをすることができると思います。

山口 アニメーションに特化しているのはアヌシーだけですから、アニメーションの海外展開においても、アヌシーの存在に目を向けていただきたいと思っています。カンヌに行くのが当たり前のように、海外のネットワークを広げていく体制として、アヌシーがきっかけになるのではないかと思います。また、『この世界の片隅に』に対する評価やその後の展開からも、ゲストカントリーの次のステップとして、中小企業の方々にとっても、「いるべき場所」「いなければいけない場所がアヌシー」という風に繋がればと思います。

市井 我々は、アヌシーという場所をいかに活用するか。そうするためにはどうすればいいのかを考える必要がありますね。

マルセル 今日からでも議論を始めることが大切だと思います。ゲストカントリーとして成功するか否かは、自分たちの目的を明確にして、いかにリーダーシップをとっていくかに関わってくると思います。繰り返しになりますが、当事国の関係者がどれだけ結集できるか。公的機関と民間企業が同じ目標のために、どれだけ団結できるかによると思います。

ミカエル みなさんそれぞれ違いがあると思いますが、その違いをお互いに尊重しながら一緒になれるかどうか。アヌシー自体がそういうものなのです。

市井 2018年のアヌシーには、日本からできるだけ多くの方に参加してもらい、いろいろな方と会っていただいて、その延長線上で、次のステップに進んでいけたらいいと思います。本日はありがとうございました。

 

マルセル・ジャン

CITIA* アーティスティックディレクター


1998年にカナダ国立映画制作庁(NFB)アニメーション・スタジオ部門にプロデューサーとして就任。作家性の強いアニメーション制作を指揮。また、前任者も長く交渉していた国際共同制作を実現し、フランスのアニメーションスタジオ「FOLIMAGE」とアニメーション作家やクリエーター向けのレシデンス企画を実施。長年にわたり、映像評論家としても活躍し、筆者として多数の映像関連書籍を出版。(Le Langage des lignes; Pierre Hebert, l’homme anime)。出版会社「Les 400 Coups」ではコレクションディレクターとして所属。Cinematheque Quebecoise(Québecフィルム・アーカイブセンター)のキュレーターとして活躍し、モントリオール大学ではアニメーションと美学の講師を担当。「Vacheries 」(1990年)、「 Ecrire pour penser 」(1999年)、「Jeu」(Georges Schwizgebel氏と共同プロデュース)、「Conte de quartier」(Florence Miailhe監督)、「Tragic Story with Happy Ending」(Regina Pessoa監督)など5作品の監督またはプロデューサーでもある。
2012年、「アヌシー国際アニメーション映画祭」のアーティスティックディレクターとして就任。

 

ミカエル・マラン

CITIA* マネージングディレクター 経済発展・MIFA会長


フランス・サヴォワ大学・IAE サヴォワ・モンブラン校商学部卒業。
2001年に国際アニメーションフィルムセンター(CICA)に入社、2002年〜2004年まではMIFA代表アシスタントを務める。
2005年、CICAは、CITIA*という名の文化協力事業公社に切り替わり、CITIA*営業部長に就任、同時にMIFAの商業面の拡大・発展を推進した。
2009年には、MIFAの会長に就任。CITIA*会長と共に、CITIA*のマーケット戦略を立案、国内・海外市場への影響力を行使、 そして組織全体の運営を担当。更に2011年からは、MIFA、そして経済発展の代表に任命されマーケットの任務に併せ、CITIA*の取締役代表のパトリック・エヴェノ氏と共に、オート・サヴォワ地方産業発展課の映像とクリエイティブの開発を進める。
2015年、CITIA*のマネージングディレクターに就任。

 

山口晶

CITIA* 日本代表 サンブリッジ取締役代表


1980年、パリ・フランス生まれ。ソルボンヌ大学メデイア情報学部入学メディア/ラジオ放送専門学校サウンドプロデューサー部卒業。パリのメディア産業界でサウンドプロデューサーとしてキャリアをスタート。RTL Groupの若者向けラジオ局で番組プロデュース。その後、ポストプロダクションに転職し主に、海外の大手製作会社の作品の製作進行を担当。
東映アニメーションのヨーロッパ事務所設立直後、ライセンス&プロダクションマネージメントとして入社。
2009年、フランスからカナダ・モントリオールへ移住。引き続き、アニメ製作会社でビジネス開発を担当する。
2012年、フリーランスで日本アニメコンテンツのビジネスアドバイザー、コーディネーターとして活動開始。同年9月に、SUN BRIDGE Inc.を設立。
日加の産業協会や行政機関(ケベック・映画・テレビ協議会、JETRO)の海外コーディネーターのサービスを提供。また主に、日本、フランス、カナダ、アメリカのアニメーション制作会社のアドバイザー・コンサルタント・プロデューサーとして活躍している。ケベック州政府経済産業省2014年度「イノベーションと貿易」ミッションにてアニメーション業界の代表としても参加。
2016年、アヌシー国際アニメーション映画祭・ MIFAの日本代表として配属。
近年では、以下のプロジェクトを実施。
デジタルアニメ制作ソフトウェア「Toon Boom」の日本のビジネス展開、株式会社ジェンコの海外Rep。ゲーム開発会社の株式会社サイバーコネクトツー(初の海外拠点であるモントリオールスタジオの立ち上げのリエゾン・コーディネーション)等。
2017年6月、ケベック日本ビジネスフォーラム商工会の会長に着任。

 

*CITIA:アヌシー都市圏共同体、オート・サヴォア地方議会 およびローヌ・アルプ地域圏が出資する文化協力事業公社

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本海外展開セミナー・イベントは、経済産業省 平成28年度補正予算 コンテンツグローバル需要創出基盤整備事業費補助金の「コンテンツ等流通促進事業」によるものです。