中南米音楽プロモーターインタビュー実施報告(第14回東京国際ミュージック・マーケットで招聘)

J-LOP4補助金事務局では、第14回東京国際ミュージック・マーケット(2017年10月23日、会場:渋谷エクセルホテル東急)において、YAMATO(ブラジル/ペルー/アルゼンチン)、NINSHI(メキシコ)プロモーター2社と、モデレーターとしてYAZ NOYA-COLLINS氏(LYNKS INTERNATIONAL社長)を招き、「中南米からの熱い視線」~地域ごとの具体例からみる、中南米での日本の音楽の需要~セミナーを開催いたしました。その3名に、セミナーではご紹介しきれなかったマーケットや日本人アーティストについて、VIPO専務理事 事務局長の市井がインタビューを実施しました。

※セミナーの内容全文はこちらからご覧いただけます。

 

  • YAZ NOYA-COLLIN氏 (LYNKS INTERNATIONAL社長)[略歴
  • 近沢 隆氏 (Yamato Corporation CEO)[略歴
  • 富樫 真未氏 (Ninshi S. de R.L. de C.V.)[企業概要

※五十音順
※富樫 真未氏は、メキシコ地震の影響で来日できなくなったNinshi代表 棚町 健二氏の代理で参加

(以下、敬称略)

 

セミナーでは語られなかった“成功するアーティスト”のSNS戦略 − メキシコ、ブラジルで日本のアーティストが成功するためには?

 

ブラジルとメキシコにおける音楽市場の違いとアーティストの動向

メキシコの音楽ニーズは日本とアメリカの曲が主流

メキシコ音楽市場の100%近くが海外音楽

市井 中南米は若者の人口が多く、日本文化愛好者も多いと聞きます。今日は、特にメキシコとブラジルを中心に、今の音楽市場について、そして日本音楽への需要は今どのような状況なのか、お話していただきたいと思います。

まずメキシコからうかがいましょう。日本は音楽市場の約85%がドメスティックで約15%が洋楽ですが、メキシコではいかがですか?

富樫 実は、メキシコにはメキシコ人のアーティストがあまりいないんです。アメリカや日本やコロンビアなど海外のアーティストが多く、大きなシェアを占めています。

市井 メキシコ人アーティストの市場が少ないのですか?

富樫 少ないです。メキシコにも日本の演歌のような古くからの曲があり、みんな親から教わって知っています。でも今はメキシコ人がアーティストとして出ることはほとんどありません。古い人たちばかりのバンドになってしまいました。

市井 最近はどのような音楽が流行していますか?

富樫 多いのがベネズエラやコロンビアからきているジャズのような曲ですね。あとはDJを使ったアメリカの音楽が流行っていて、大きな規模があります。

市井 コンサートのオーディエンスの中心は若者ですか?

富樫 どのジャンルも若者や30~40代の方が多数ですが、アメリカと日本のアーティストには特に若いオーディエンスが多いです。コンサートには10~20代の若者が親と一緒に来ることもあります。

 

メキシコ人は海外のアーティストを待っている

市井 南米の方々はみんな音楽好きというイメージがあるのですが、メキシコ人アーティストがいないのは不思議な感じがします。

富樫 おっしゃる通り、メキシコ人は情熱的で生まれたときから音楽や踊りが大好きです。パーティーでもずっと踊ったまま音楽を聴いたり、コンサートでは踊ったり、はしゃいだりもしますね。ですが本来メキシコの音楽はジャンルが違うので、ロックなどのにぎやかな音楽が欲しいと思っても、メキシコ人はそういう曲をあまり作れないんです。

YAZ ラテンのリズムが身についているので、得意なラテンのリズムを使ったPOP系はすごく流行っています。ただ、メキシコのアーティストはアメリカでヒットしたらそのまま移住してしまうことが多いですね。

市井 その方たちの音楽は、アメリカンミュージックになってしまうのですか?

YAZ 英語で歌えば、洋楽になりますね。

市井 そうですか。洋楽では特にどの地域のアーティストが多いですか?

富樫 アメリカとアジアはそれぞれ約40%ずつ。J-POP、K-POPはすごく売れています。残り約20%はコロンビアやベネズエラなどの中南米のアーティストが占めています。

市井 メキシコの方たちは、K-POPとJ-POPの違いはあまり感じていないのでしょうか?

富樫 違いは感じていますよ。日本と日本文化が大好きな人と、韓国と韓国文化が大好きな人は分かれています。

市井 メキシコでコンサートをする場合、チケット料金はどのぐらいになりますか?

YAZ アーティストにもよりますが、例えばコンサートが50~60ドルとしたら、VIPパッケージ(アーティストとのサイン会、ハイタッチや記念撮影などを含むプレミアムチケット)は120~200ドルぐらい。VIPパッケージはコンサートチケットの倍以上です。

市井 日本と比べてすごく安いわけではないですね。

YAZ そうですね。アニメーションや友だちをきっかけにその音楽を聴きに行こうという人は、一般のチケットで安く入ります。でもそのアーティストが好きという人はVIPパッケージを買いますね。

富樫 最近はメキシコの経済が落ちているので、メキシコ人はあまり国外に演奏を聴きに行かなくなりました。海外からアーティストが来るのをずっと待ち望んでいます。大好きなアーティストと握手ができる、一緒に写真を撮ることができる、だから金額が高くてもVIPパッケージを買うという人もいます。

 

日本人アーティストやパフォーマンスの変化

市井 日本人アーティストはコンサートで日本語を使っているのでしょうか?

YAZ VAMPSは日本語と英語、X JAPANは英語を使っていました。他にも英語でやるアーティストも多いと思います。事前に勉強してMCをスペイン語で行うアーティストもいます。

でも無理に外国語を使う必要はないと思いますよ。ファンは日本文化が好きだし、アーティストが何を言っているのかを知りたいからと日本語を学んでいる方も大勢います。だから、コンサートでアーティストが何か話せば、通訳をする前にみんなワーって騒ぎますよ。 

市井 日本のアーティストの変化を感じることがありますか?

YAZ 少し前までは、「俺たちは外国でもスタイルを変えないぞ」と意気込んだ感じのアーティストがたくさんいました。でも最近では海外に出る機会が増え、その国の言葉でMCをしたり、その国の食べ物を食べたり、順応しようとするアーティストが増えていると感じます。特にセットリストが違ってきました。その国でどんな曲が流行っているのか、アーティスト自身が勉強してから来てくれるようになりました。

市井 アーティストが「この曲をやりたい」と言ってきたとき、プロモーターの方から何かリクエストすることはありますか。

YAZ アーティストからは「現地では僕たちのどんな曲が流行っていますか?」とよく聞かれますが、日本では新曲を聴きたがるけれど、南米では少し前に流行った曲を聴きたがるんです。そういう説明をすると、アンコールなどにそういう曲を演奏してくれますね。

市井 メキシコのみなさんは、どのようにして音楽を手に入れるのですか?

富樫 iTunesです。Spotifyもあります。メキシコの音楽環境は北米に非常に近いですね。昔はコンサートがあまりなかったので、新しいアルバムが出ても昔の曲ばかり聴いていました。インターネットが普及してからは、マンガやアニメーションをすぐに見ることができるので、いろいろなアーティストの、アニメーションの主題歌以外の曲なども、よく知られるようになりました。

 

ブラジルの音楽市場で存在感を増す日本ファン

ブラジル音楽市場の中心はカントリーやロックなどのブラジル音楽

市井 メキシコの興味深いお話をありがとうございました。今度はブラジルへ目を移してみましょう。ブラジルの音楽市場の特徴は何かありますか?

近沢 ブラジルはメキシコとは異なり、ほとんどがブラジルの音楽を聴いています。それ以外は主にアメリカの音楽が入っています。あとは欧州やアジアなどのアーティストに、特定のファンのグループができている感じです。日本やアジアの音楽についているファンの約90%はブラジル人で、日系人ではありませんね。

市井 日本やアジア音楽ファンの約90%はブラジルの方なのですね。

近沢 若い人向けの音楽はそうです。演歌だと約90%が日系の高齢者ですけれど。

今のブラジル音楽業界の主流は、セルタネージャというブラジルのカントリーミュージックです。カーニバルの時期にサンバが売れるといった季節的な変動はありますが、ほとんどはブラジル人によるブラジル音楽が大きな市場を作っています。

B-ROCK(ブラジルロック)は全盛期があったのですが、今はだいぶ落ちています。逆にアメリカなど、海外のロックやロマンティック音楽が入ってきています。

 

海外で成功してブラジルに凱旋

市井 アーティストやミュージシャンの地位や影響力についてですが、ブラジルから海外に出て、成功して戻るケースがありますよね。子どもたちや若者はそういった海外への憧れを持っていますか?

近沢 海外にサクセスを求める傾向はあります。海外で成功してプロになるというのはアーティストにとって定石の一つですし、ブラジルに帰ってきてもビッグネームでいられますから。

彼らはアメリカでライブをするとき、同時にブラジルのSNSでも宣伝をしています。「今、こんなことやっているんだよ」「アメリカのどこにいるよ」「この曲をやっているから、君たちも聴いてね」という感じのプロモーションです。そして、ブラジルに帰ってきたら「これがアメリカで演奏した曲です」と、今度はポルトガル語バージョンで歌う。そうするとブラジルのファンも盛り上がります。彼らは海外で演奏しても、海外に住みたくはない。ブラジルに帰りたいようですよ。

市井 そこがメキシコとは違いますね。

近沢 ブラジルに住んだことがある人は、住むのにこれ以上の国はないと言います。経済も治安もあまり良くはないですが、ブラジル人がとても心温かいから(笑)。道に迷って誰かに聞くと「すぐそこだけど、連れて行ってあげるよ」という人ばかりです。それにブラジルは地震も津波もないし、どこへ行っても綺麗なビーチがある。移民の国で世界中のおいしい食べ物が集まっている。ブラジルで良くないのは政治ぐらいですかね(笑)。政治以外はとてもいいところですから、祖国に帰って来たいのだと思います。

市井 ブラジルの方たちも音楽好きですよね。

近沢 ブラジル人にとって音楽はその人の人生すべてを意味すると思います。悲しいとき、幸せなとき、ドキドキしているとき。そういったシーンごとに音楽があるんです。ブラジル音楽、アメリカの音楽、日本の音楽、国籍に関係なく「とにかく音楽」というのがブラジル人です。日本のオーディエンスはみんな静かですが、ブラジルのオーディエンスはすごく熱狂的です。

市井 オーディエンスはやはり若者が中心ですか?

近沢 日本のビジュアル系アーティストのコンサートには12歳~17歳ぐらいのオーディエンスが来るのですが、火曜や木曜にライブを企画すると「平日にやらないで」とブーイングが出ます。それに比べて、J-ROCKはハイティーンから30~45歳ぐらいの人たちが来るので、そういうクレームはありません。J-ROCKは80年代からJ-ROCKを聴いていた人たちが中年になっても来てくれています。

市井 僕らにとって、J-POPはアイドル系も含めて若い方が聞くというイメージが強いのですが、80年代から聞いているということは、その当時のアーティストの人気が続いているということですか?

近沢 J-POPではなくまだ歌謡曲と言われていた時代のアーティスト、中森明菜や松田聖子のファンがいます。私は今44歳で彼女らのファンなのですが、同じぐらいの年齢の人たちが昔から聴いています。今のバンドやアーティストには若いファンがつくし、ちょっと古いバンドやアーティストには、私たちのような年齢のファンがつきます。

市井 アーティストによるということですね。そういう意味では幅が広そうですね。

 

日本の音楽に対する認知と可能性

アジアンミュージックとしてのJ-POPとK-POP

市井 ところで、アジアの音楽は中南米で今人気ということですが、K-POPとJ-ROCKが同じような扱いをされている気がします。その点、ブラジルではいかがでしょうか?

近沢 最初はみんなJ-ROCKが好き、J-POPが好きという感じでした。でも、J-POPやJ-ROCKのバンドが来ない間に、ファンがK-POPへ移ってしまいました。

例をあげましょう。私は2003年から日本のアーティストを招聘しています。7~8年はずっとアニメーションのシンガーを呼んでいましたが、そのうちアニソンはバンドを呼ぶ時代となりました。『NARUTO-ナルト-』の曲を歌っているASIAN KUNG-FU GENERATIONにコンタクトをしたのですが、スケジュールがいっぱいでなかなか来てもらえなかった。今年になってやっと来てもらえました。

以前は少なかった日本のアーティストを招聘しているプロモーターが、最近になってやっと増えてきたなと思ったら、そのプロモーターがK-POPのアーティストをブラジルに呼ぶようになってしまいました。日本のアーティストがなかなか来てくれないんです。他方ブラジルのオーディエンスにしてみれば、日本語で聴くのと韓国語で聴くのはほとんど同じ。気づいたときには日本から韓国のアーティストに移り変わっていて、私たちはちょっとパニックになりました(笑)。そこで、私たちはアニメーションや日本文化に焦点を当てて、ラジオとネットで日本をアピールしています。ここは宣伝しなければと頑張っています。

市井 メキシコはどちらかというと、日本と韓国では別々のファンがいるとのことでしたが、ブラジルはアジアンミュージックの中で、特にファンが分かれていないということですか?

近沢 オーディエンスにとっては日本・韓国の区別はなく、アジアの音楽全体への共感が生まれているという印象です。

YAZ 日本の音楽ってJ-POP、アイドル、J-ROCKなど、カテゴリーがたくさんありますが、K-POPはひとつ。だからすごくわかりやすい。特に欧米はそうなのですが、わかりやすいのが好きなんです。K-POPの中で有名なアーティストはBIGBANGぐらいで、南米に来ているのがすごくビッグアーティストというわけではありません。

近沢 ブラジルの若いオーディエンスは身体を動かすのが好き。歌うのも好きだけど、踊るのもすごく好き。それに対して、日本のバンドはあまり踊りませんよね。K-POPはみんな踊ります。最近、ブラジルで流行っているのは、K-POPに合わせてダンスを踊るコンクールなんです。

市井 そうなんですか。メキシコにも同じようなものはありますか?

富樫 ある程度はあります。女の子が衣装を着て踊るのもありますし、オタ芸もあります。

 

多様なニーズとプロモーション戦略

市井 日本の音楽が中南米に進出する可能性はいかがでしょうか。メキシコの場合、基本的にはアニソンがベースでしょうか?

YAZ アニメーション以外だとビジュアル系か、日本でのビッグアーティストですね。

富樫 そうですね。あとはアイドル系。

市井 日本のビッグアーティストでは、たとえばどなたが有名ですか?

YAZ J-ROCKではL’Arc~en~Ciel、X JAPAN、GLAY、LUNA SEA。POP系では安室奈美恵、浜崎あゆみ。アイドル系も名前は出てくるけれど、AKBのように人数が多いとか、メキシコは治安が悪いと思われているなどの理由で、なかなか来てくれません。でも需要はあるんですよ。

富樫 アイドルは大人数のグループよりも、5~6人の方が人気が出ますね。モーニング娘。や℃-ute とか。

YAZ アップフロント・プロのアーティストが人気あるのは、海外へのプロモーションをずっと続けているからだと思いますよ。それと、絶えず変わるのは受け入れられないみたいですね。

市井 ブラジルはいかがですか?

近沢 すべてのジャンルにそれぞれのファンがいます。いずれにおいても絶対に必要なのは、6か月くらい前からしっかりとプロモーションをすることだと思います。ブラジルでは情報が浸透するのにとても時間がかかります。

L’Arc~en~CielやX JAPANがブラジルでライブをやると、最初は3,000人、4,000人、5,000人と集客できますが、情報が浸透していないと、もう一度ライブをやると集客力が3,000人ぐらいで終わってしまう。ビジュアル系バンドのVersailles(ヴェルサイユ)はブラジルで3回ライブをやっています。最初はすごくよかったのに、最後はギリギリでした。彼らが今何をやっているのか、ブラジルのお客さんがキャッチできなければ熱は続きません。だから一度ライブを観ればそれで満足という風に完結してしまう。ですから、事前のプロモーション期間が重要なんです。

 

日本人アーティストの海外進出と課題

外に向けて自分自身で発信する

市井 中南米の音楽業界で活躍するために大切なことはどのようなことでしょうか? ミュージシャンだけではなく音楽で仕事をしている方たちのために、アドバイスはありますか?

近沢 ブラジルのファンは日本からいろいろなアーティストが来てくれるのを望んでいます。入れ替わり立ち替わりで来てくれれば、きっとブームになりますよ。

ブラジルの人たちは新しい物への要求が強いんです。アーティストや日本の音楽に対するアンテナをすごく張りめぐらせているので「こういうアーティストがいる」という情報は持っています。私たちの側もそういうアンテナに応えるようなプロモーションをやっています。アーティストがもっとブラジルに来てライブをやってくれれば、好循環になります。たまにブラジルに来るのではなく、いつも来てくれる存在であってほしい。日本のアーティストのプレゼンスをもっと確かな物にしたいと願っています。

市井 どのようにすれば日本のアーティストが中南米でプレゼンスを高めるようになるでしょうか?

YAZ 私は日本のプロダクションやマネジメントの方に「海外でのブッキングをしてください」と頼まれたとき、「ブッキングはできます。コンサートもできます。でも、何のために海外に行かれるんですか?」とお聞きします。「世界戦略を狙いたい」と言うので「日本を規準にして考えると世界戦略はできません。世界を規準としたとき、日本から何を発信したらいいのかを考えてほしい」と答えます。

なぜ欧米のアーティストが世界で成功して日本のアーティストが成功しないことが多いのでしょうか? 大きな違いはアーティストが自分自身で発信していることです。欧米のアーティストは自分で発信して、自分で責任を取ります。日本のアーティストはマネジメントがそれを全部コントロールしています。しかしファンはアーティストが自分で発信しているかどうかを見抜いてしまいます

ジャスティン・ビーバーが良い例で、良くも悪くも全部自分で発信しています。K-POPも自分で発信して、自分で握手をします。みんなに感謝して、プロモーションビデオをどんどんかけます。日本は最初から「ここの地域ではプロモーションビデオを使わないでください」「この音源を使わないでください」「権利はどうなっていますか?」と言う。それを言っていたら海外戦略は難しいと思います。

本当に世界に知ってもらいたいのであれば、プロモーションツールをどこまで大きくできるか、人々にどう訴えるか、各地で何ができるのかを固めておかなければ。さもないと点だけで終わってしまい、労力だけが大きくて実入りが少ないという結果になります。ビジネスにするためには海外にたくさんのパートナーを作って、その土地で何が受けているのか、どうやったらプロモーションができるのか、何が効果的なのかをパートナーと話し合い、その国のエキスパートにならないと世界戦略は難しいと思います。

市井 アーティストが過剰に守られている反面、事務所はそういう部分のフォローが不足しているということですね。

YAZ そうですね。現地のことがわからないからと皆さんおっしゃるのですが、わからなければ知ってください。わからなければその国にパートナーを作ってください。我々のようなチームをどんどん利用してください。

欧米のアーティストはエージェントを使って、何がなんでも入ってこようとするんですよ。「言葉が通じないなら通訳を連れて行きますよ」とか。その国のことを一生懸命に勉強して、パートナーと一緒に戦略を作っていく。方法はいろいろあると思うのです。

日本の洋楽系のプロモーターさんは非常にしっかりしていますよね。海外の視点から見れば、ああいうパートナーがいるから日本国内で洋楽がよく売れるのだと思います。

市井 プロモーションのベースができているのに、日本からは中南米に入って来ない。そこにK-POPが入ってきた、という話になるわけですね。

YAZ せっかくいいベースがあるのだから、どんどん外に出て欲しいですね。「失敗すると困るんだ」とよく言われるのですが、すでに成功したところに行くだけなら簡単です。道を切り拓いていくという方向に発想を変えるが大事だと思います。

 

ギャランティとスケジュールの問題

市井 コンサートで行く場合、日本のアーティストにギャランティを払うパターンがほとんどですか。

YAZ いくつかの契約パターンはありますが、そうですね。私が手掛けている「Anime Friends(アニメフレンズ)」に出演していただく際は、航空費や食費・宿泊費をこちらで負担しています。

市井 それでも日本から来ないのですか? ギャラの問題でしょうか?

YAZ それもあると思いますが、日本から南米へは行き帰りの移動で4日間を取られてしまうので、スケジュール的に無理というパターンが多いです。南米までの高額な飛行機代を負担しても「このギャラじゃ行きません」「夏フェスが入っているので行けません」と言われてしまいます。

市井 それだけの期間でギャランティを出したら、バンドの場合はプロモーターが大変ですね。

YAZ でもそれを元にがんばって地域でヒットを出してくれれば、最終的に現地のパートナーも潤いますよ。今日はYamatoさんとNinshiさんが来てくださっていますが、他のいろいろなプロモーターの方と組んでいただくのがいいと思います。

今までは足踏みされていましたが、一時に比べると南米にもアーティストが行くようになったとは思います。堀内孝雄さんを呼んだとき、最初はお客さんが入るのかと疑心暗鬼でしたが、行ってみたら3,000人がみんな泣きながら聴いている。そういう状況が日本にも伝わり、新しいところから門戸が開かれ始めていると思います。

 

海外への一歩はファンとの交流から

市井 最後になりますが、読者の方にお話したいことはありますか?

近沢 私は今までずっと日本の音楽のプロモーションを手掛けてきましたが、これからは音楽のみならず、ファッションやゲームなどの日本文化を全般的にやっていきたいと思っています。というのは、日本の音楽を聴いている若いファンに加えて、日本文化について興味を持つ年齢層の高い人たちがたくさんいるからです。その人たちは非日系人です。相撲や寿司のワークショップをすると興味を持って来るし、Facebookで日本文化の情報を掲載すると、たくさんのコメントがくる。そういった分野に興味を持っている人たちとも、全体的に盛り上がりたいと思います。

富樫 アーティストの方々には日本国内だけにとどまらず、世界中に来てほしいです。地球の反対側なので、不安もあると思いますが、当社のプロモーターや通訳などのスタッフには日系人、アジア人が大勢いて、「おもてなし」など、わかり合える場を作っています。恐れずに来てほしいなと思います。

YAZ 世界は怖くないんだと、皆さんにわかっていただきたいですね。治安の心配もあるのでしょうが、今はインターネットの時代です。世界に出ることは日本で活躍することと同じです。日本の延長と考えてほしいんです。

SNSで「hola!」「Hallo!」と挨拶するだけでもいいと思います。それだけで、海外のファンは「自分たちの言葉で発信してくれた」「繋がった!」と思うんです。「今日はフランス語で返事をします」って書いて、あとは日本語でいい。そうすれば、そこの地域の日本語ができる子が訳してくれます。「今日はタコスを食べました」と写真を載せてみるとか、自分は海外のほうへ向いていますよ、海外のファンと交流したいと発信する。日本人はシャイな人が多いのですが、海外に出たいと思ったら、まず海外にたくさん友だちを作ることから始めませんか? それが自然にファン獲得に繋がっていくと思います。

富樫 Coldplay(コールドプレイ)というイギリスのバンドは、メキシコ地震の時にチャリティコンサートをしてくれました。わざわざメキシコのために歌を作り、コンサート会場の後ろにメキシコの旗を飾り、メキシコでやったコンサートの収益をすべて募金しました。メキシコ人からすればそれまでも憧れの人だったけれど、さらに好きになりました。

市井 本当にそうですよね。海外はアクションが早いですからね。

YAZ YOSHIKIさんも、メキシコでコンサートやったときも自分でチャリティをやってくれました。何か災害があるとそういう働きかけをしているでしょう。なぜX JAPANとYOSHIKIが世界各地に行けるのかというと、行った先々でファンと会話をし、繋がろうとしているからですよ。

市井 彼は今もファンとコミュニケーションしているんですか?

YAZ 彼はツイッターを使い、行く先々で「Hello! どこどこ」と彼らがいる国の言葉で発信しています。そうするとファンたちは「自分たちのことを忘れないでいてくれた」「自分たちとコミュニケーションを取ろうとしている」と感じるのです。なぜYOSHIKIさんがトップアーティストでいられるかといえば、そういう努力があるからだと思います。

でもそれは、やる気さえあれば誰でもできることではないでしょうか? 海外公演に呼んでくださいというのは簡単ですが、呼ばれたら自分からもちゃんと現地のオーディエンスに発信をして、世界のみんなとコミュニケーションすることが重要だと思います。

市井 中南米に関わらず、世界に出たいのなら、それぐらいのことはやってくださいということですね。セミナーに引き続き貴重なお話をありがとうございました。

 

Yaz Noya Collins

プロジェクトコーディネーター、プロデューサー


YAZ NOYA-COLLINSはアメリカ、ロサンゼルスを起点に、日本の音楽とカルチャーを海外に紹介/イベントへのブッキング/コンサートプロデュース/、マーケティングを行う会社LYNKS INTERNATIONALの社長。
1997年に渡米後、アンティノス・マネージメント・AMERICAにて東風レコードを設立。多くのアーティストの海外進出への足がかりを作った。その後、海外のフェスティバル、コンサート、ツアーなど多くのアーティストの海外進出のプロジェクトを手がけ、プロジェクトはアメリカだけではなく、アジア、ヨーロッパ、メキシコ、南米と各地でパートナーと共に、世界規模でのプロジェクトを目指す。プロジェクトを担当するアーティストは、ポップ、ロックに限らず、日本伝統音楽、アニメソングに至るまで、海外にあるマーケットを切り開く業務を続けている。

 

近沢 隆 Takashi CHIKAZAWA

ヤマトコーポレーションCEO


経営管理論学と宣伝学の学位を修め、イベントとエンターテインメント業で活動するブラジルのビジネスマン。
現在は、15年以上ブラジル、アルゼンチン、チリとペルーのポップカルチャーマーケットを開拓しプロモートを行っている。
メインの活動は「Anime Friends(アニメフレンズ)」というイベントであり、ポップカルチャーに関連した商業的パートナーを一堂に会し、毎年10万人以上のファンを魅了している。2017年の第15回を数えるまで日本から数多くのゲストが訪れ、「Anime Friends(アニメフレンズ)」で公演してきた。
2013年には「Brazil Comic Con」というイベントを初めて開催し、コミック・ゲーム・映画に関連したブラジルでの最大級のイベントとなった。
プロデュースしてきたイベントは全て、サンパウロに大きな経済効果をもたらし、市場を活性化し、直接的および間接的に雇用の創出をもたらした。
他の領域への投資も行っており、NewPOP(漫画出版社)、AreaE(漫画学校)、Revista Mundo OK(アジアカルチャー関連の雑誌)、Yamato Music(日本のアーティスト・コンサートのプロデュース)等の会社のパートナーであり共同創設者である。
2010年に経産省とJapan International Contents Festival委員会とともに、日本のポップカルチャー普及を狙い、「コ・フェスタ(JAPAN国際コンテンツフェスティバル)」*1をブラジルで開催した。
常にブラジルと日本両国のためのビジネスの機会を開拓し、相互関係のさらなる強化に尽力をしている。

*1コ・フェスタ(JAPAN国際コンテンツフェスティバル)
日本が誇るゲーム、アニメ、マンガ、キャラクター、放送、音楽、映画といったコンテンツ産業およびファッション、デザイン等コンテンツと親和性の高い産業に関わる各種イベントを効果的に海外に発信するための海外発信力強化支援プロジェクトです。日本コンテンツに係るイベントのネットワーク構築を行い、コンテンツを主軸としたオープン・イノベーションの在り方等を検討し、国内外に向けて情報発信することで、日本コンテンツの市場拡大につなげることを目的としています。2007年より経済産業省からの委託事業としてVIPOが運営している。

 

Ninshi S. de R.L. de C.V.(仁獅)

2010年に設立されたメキシコの音楽プロモーションの会社。設立時は語学学校としてスタート。
スタッフの多くが日本人をはじめとするアジア人で、主にアジア文化の普及に力を入れており、メキシコでのコンサートを組織・プロデュース・プロモートしている。
多彩なジャンルのアジア音楽のコンサートやイベントを運営し、アジアとメキシコの文化の懸け橋となり、社会的に高い評価と信頼を得ている。

<公式サイト>http://www.acaninshi.com/

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本海外展開セミナー・イベントは、経済産業省 平成28年度補正予算 コンテンツグローバル需要創出基盤整備事業費補助金の「コンテンツ等流通促進事業」によるものです。